聖パウロ女子修道会 協力者会 −ともに福音を宣教するために−

第41回「世界広報の日」教皇メッセージ
   子どもとメディア−教育における課題 1

解説:聖パウロ女子修道会会員 長谷川 昌子

 教皇様の「世界広報の日」のメッセージをご一緒に読み始める前に、21世紀は、デジタル、メール、ネット文化の世紀だと言われています。ですから、このメッセージの内容は、非常にタイムリーなメッセージだと言うことができます。

※ 緑色の太文字は、教皇メッセージ

親愛なる兄弟姉妹の皆様

1.第41回世界広報の日にあたり、「子どもとメディア−教育における課題」をテーマにして、互いに関連する極めて重要な二つの問題について皆さんとともに考えてみたいと思います。一つは子どもの育成であり、もう一つはメディアの育成という、少し漠然としているかもしれませんが見逃すことのできない問題です。

パソコン 今年の世界広報のテーマは、「子どもとメディア」です。
このテーマに教皇様は、サブテーマとして「教育における課題」をつけておられます。英語のメッセージを見てみますと、「挑戦」という言葉が使われています。挑戦しなければならない課題があるということです。

 教育の観点から見たとき、子どもとメディアとの関係には、重要な2つの問題が浮かび上がってきます。その2つの問題について、「世界広報の日」に特に考えてください、と教皇様はわたしたちすべての信者に呼びかけておられます。その問題とは、 1.子どもの育成
2.メディアの育成
です。今から、これについて教皇様は、わたしたちを導いてくださっています。

 ここで、日本のメディア状況を、まず見ておこうと思います。
「子どもとメディア」と言うとき、一昔前でしたら、「テレビと子ども」ということに話が集中していたと思うのですが、現代では、何と言っても問題の中心は携帯です。最近では、携帯については「ケータイ」とカタカナで書く人も増えてきました。
と言うことで、ケータイについて少し触れてみましょう。

 1987年、日本で最初はレンタルで携帯が始まりました。この時は、企業がレンタルして営業の社員に持たせるとか、経営者が連絡をいつもとれるように持つとか、というふうに使われていました。
その状況が変わるのが、1994年です。この年からレンタルだけではなく、個人が買えるようになりました。そうすると、所有率が72.5%と一気にあがりました。
 そして、2001年に「第3世代携帯電話」と言われる携帯が登場しました。これは、高速通信で、テレビ映像や良質の音楽を楽しむことができるものです。
 2006年8月末、契約数は9350万件に達しています。

 第3世代携帯電話には、小型のハードディスクが入れられており、データ量が飛躍的に増えました。例えば、音楽なら1200曲保存でき、動画の録画も24時間しようと思えばできるようになりました。テレビ機能が付いている携帯もあり、これならテレビ録画もできるのです。
 これだけではなく、現在の携帯がもっている機能は、通話以外に、メール、ネット、カメラ、音楽配信、ナビゲーション、テレビ視聴、ゲーム、電子マネー、株取引、定期券や乗車券が買える「モバイル SUICA」「おサイフケータイ」などがあり、広く利用されています。
 以前から通販がありましたが、携帯の発達普及によって、携帯通販の分野が急成長しています。通販全体では3兆円市場といわれていますが、その約1割を携帯通販が占めるようになりました。その顧客の90%以上が30代以下の人々だそうです。

携帯電話  携帯の普及が子どもの生活環境を変えています。今や携帯に問題集や参考書をダウンロードして、画面上で学習できるサービスが、2005年6月から始まっています。
 これは、勉強の面ですが、子どもたちも通販を利用しています。彼らが通販で何を買うかというと、今はやっているスニーカーとか、ジーンズなどのようです。

 一例として、ある都内の中学校の生徒たちの携帯状況を見てみることにしましょう。
これは、法政大学の先生が2004年に実施なさった調査結果ですが、次のようなことが報告されています。

携帯電話を持っている生徒の中で、使用マナーを知らないと答えた生徒 20%
「いやな思いをしたことがある」と答えた生徒 50%
学年 男子 女子
「見知らぬ人とメールのやりとりを下ことがある」と答えた生徒 3年 38.4% 60%
2年 34.3% 51.5%
1年 18.3% 22.7%

 女子の方が高い率。これは、女子の方がメール派、男子の方がネット派だからであろう、とこの教授は判断なさっておられます。

学年 男子 女子
携帯電話で知り合った人と実際に会った生徒 3年 1人 5人
2年 1人 3人
1年 2人 1人

 インターネットを使えるパソコンが家にある生徒は6割。 その9割の生徒が、家でインターネットを使っている。 インターネットを使う目的は、調べ学習:94%。次が、メール、チャット、ネットオークションの順に挙がっている。その他、ゲーム、音楽のダウンロード、スポーツ情報など。
 自分のホームページを持っている生徒は、1年生に多い。 男子は3人、女子は5人である。

 今日教育が直面している複合的な難題の多くは、世界の至るところに見られるメディアの影響と結びついています。メディアはいまや、グローバリゼーション現象の一面として、また科学技術の急速な発展のおかげで文化環境に深く浸透しています(教皇ヨハネ・パウロ二世使徒的書簡『急速な発展−広報活動に携わる人びとへ』3参照)。確かに教育におけるメディアの影響力は、学校や教会に勝るとも劣らず、ことによると家庭の影響力に匹敵するものになっているとまでいわれています。また、「たくさんの人が、現実はメディアが提供するものとまったく同じであると思う」 (教皇庁広報評議会司牧指針『エターティス・ノーベ(新しい時代)』4)ようになっているのが現状です。

 教育問題は、どこの国、どこの地域、どこのレベルでも大きな問題を抱えています。その大きな問題を見てみると、メディアの影響と深く結びついており、それを見逃すことはできません。
 人格の確立していない時期に、バーチャルなものにひたりすぎると、現実とバーチャルなものとの区別がつかなくなると言われています。現実とバーチャルなものの間を行ったり来たりするうちに、その子どもの内に、現実とバーチャルなものの間に境がなくなってしまうようだ、と指摘されています。

 ここで、メールそれどころか、わたしの知っているある人は、あるテーマで論文を書こうと思って準備していたのですが、インターネットで調べてみると、すでにそのことはきちんと調べられ、学会で発表されているということがわかりました。これからまたテーマ探しだ、とガックリきていました。

世界中の文化環境の中に−昔は、「生まれた時からテレビがあった」とか、「空気のような存在としてテレビがあった世代」という表現がありましたが、今はコンピュータ、携帯が空気のように存在している世代」と言われています。

 今、コンピュータのない世界は考えられないほどになりました。非常に細かい手作業でしかできないと言われていた織物の模様とか、彫り物などがコンピュータで分析され、プログラムが組まれ、そのとおりにすると細かい模様が機械彫りでできるようになるとか、のことがあります。

 建築の分野でも、設計図だけではなく、コンピュータで、実際に近い立体的に見せてプレゼンテーションをするのが普通になっています。また、周囲とのつりあいなども、コンピュータのディスプレイで見せることができます。

 ここで、教皇様は、とても重要な指摘をなさっています。
それは、教育におけるメディアの影響力は、学校、教会の影響力に劣らず強いものがある。それ以上かもしれない。家庭の影響力に匹敵するものとなった、とおっしゃっています。
これは大変なことです。家庭と同じような影響力を持っているというのです。

 今まで、すべてのことにおいて、一番影響力を持つのが家庭だと言われていました。 どんなお父さんだったか、どんなお母さんだったか、兄弟との関係はどうだったか、両親の関係はどうだったかなど、そういうことがその人の人格形成の上で、非常に影響を及ぼすのです。
そのような家庭と同じ影響力を、メディアが持つようになったということを指摘なさっています。どんなに社会が変わってきたかということを痛感します。