聖パウロ女子修道会 協力者会 −ともに福音を宣教するために−

神が人間となられた 「あるクリスマスのできごと」

ルイス・カッセルズ 原作(女子パウロ会 訳)

ご降誕

 しんしんと降り続く雪を縫って、風が遠くから教会の鐘の音を運んできました。
 クリスマス・イヴです。年老いた農夫は、あかあかと燃えるストーブの傍らにすわり、吐きすてるようにつぶやきました。
「なーにがクリスマスだ。神が人間になったって? 
フン、ばかばかしい。だれがそんなもん信じられるか!」
彼はストーブにまた薪を投げ込みました。そしてゆっくり伸びをすると、満ち足りた顔つきで心地よさそうに目を閉じました。

 どれだけ時が経ったでしょう。突然、窓ガラスに何かが激しくぶつかる音が彼のまどろみを破りました。音は止むことなく次第に激しくなってきます。
 何事かと急いでカーテンを開けるや目に飛び込んできたものは、降りしきる雪の幕を突っ切って押し寄せてくる、おびただしい小鳥の群れ! この雪に閉ざされた闇の中を、道に迷った小鳥たちが微かな明かりをめがけて次々とガラスに打ち当たっては、無残にもバラバラと落ちていきます。
 彼はそのありさまをただ呆然と眺めていましたが、やにわに外へ飛び出し、雪をけ散らして納屋へと走りました。夏の間にとり込んだ干し草で一杯の納屋の戸を大きく開け放ち、ランプをあかあかと灯して小鳥たちを呼び入れようとしたのです。

 彼は必死で叫び続けました。
「こっちだ、こっちだ、こっちへ来い!」
「おーい! こっちだ! こっちだ!」
けれども、なだれのように押し寄せてくる小鳥たちにその叫びはなんの甲斐もなく、次々とガラス窓に突き当たっては死んでいくばかり。彼の思いは小鳥たちに届かず、救うことができません。歯がゆさ、もどかしさで一杯の彼の心から、悲鳴にも似た叫びが―。
「ああ、わしが鳥になって、鳥のことばで言ってやれたらなぁ!」
 一瞬 彼はハッとしました! 
いま悟ったのです、まことに「神が人となられた」ということを。
彼はくずれるように その場にひざまずきました。

 人となられた神の愛が、ひざまずく老いた農夫をあたたかく包み、その上に降り積もる雪はやさしい光を放ち、辺りを照らしていました。